老衰や病で床に伏せっていた故人が、亡くなる間際に「両親が迎えに来た」「友人が会いに来た」と語っているのを聞いた、といった話は昔から語られている話です。


また、「お迎え」体験に関する調査を 宮城県の診療所の協力で、2003~07年に家族を自宅で看取った682人を対象に実施したところ、 回答した366人のうち42.3%が、「故人が生前、お迎え体験をしたようだ」と答えたそうです。


家族や知り合いが亡くなる前、誰もいないのに誰かと会話をしている様子を見せたり、「故人が会いに来た」と語ったりする場面に遭遇した経験はないだろうか。これは「お迎え現象」と呼ばれ、送られる人にも送る人にも意義のあることだという。
 

神奈川県藤沢市のA子さん(65)は2014年6月、96歳の母親を 看取みと った。歌が大好きでよく歌っていたが、少しずつ体力が落ち、あまりしゃべらなくなった。ところが、亡くなる3週間ほど前から、部屋に誰もいなくなると、手ぶりを交えて言葉にならない声を発するようになった。

 

A子さんらが部屋に入ると、動きはぱたりと止まる。「誰とお話ししていたの」と尋ねても答えてはくれなかった。ただ、A子さんは「時折、父の遺影を見て会話をしているようでした。父がお迎えに来ていたのかもしれません」と振り返る。

 

A子さんは10年、その父親を亡くした際もお迎え現象を経験した。亡くなる3週間ほど前、父親は、1歳で亡くなった長男が自宅に来ているとはっきりした口調でつぶやいた。

 

その時は「亡くなった人が来るわけないじゃない」と信じなかった。だが、没後、知り合いの住職から「お迎えが来ていたんだね」と教わった。A子さんは「父も母も家族とともにあの世に逝ったと考えると気持ちが楽になります」と話す。

 

お迎え現象はどのくらいの人に起きているのだろうか。島根大教育学部准教授(宗教社会学)の諸岡了介さんらが07年、自宅で家族を看取った経験がある遺族を対象に実施した 「お迎え」体験に関する調査 では、回答した約4割の人が「あった」と答えた。

 

A子さんの母親を診ていた同市の湘南中央病院在宅診療部長の奥野滋子さんは「入院中の患者さんにもお迎え現象は起きていると思います。『話すと変だと思われる』という意識が働くのか、入院患者さんからそういう話を聞くことは、あまりありません」と話す。

 

末期がんや認知症などを患って全身状態が悪くなると、しばしば「せん妄」と呼ばれる意識障害を引き起こす。お迎え現象は、せん妄とは違うのだろうか。

 

奥野さんは「はっきりした違いはわかりませんが、せん妄の場合は、恐怖におびえて苦痛を伴い、話す内容も混乱しています。一方、お迎えの場合は、患者さんの意識ははっきりしていてストーリーもきちんとしています」と説明する。

 

奥野さんは昨年9月、父親を亡くした。その際、父親にお迎えが来たという。旧制高校のサッカー部の仲間4人が来たようだった。そこで、父親に真っ赤なユニホームを着せて送り出したという。

参照 https://www.j-cast.com/healthcare/2016/03/01259983.html?p=all
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